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ごー
ごー
タイムアスモデウス
Katherine
まりもっこす
Naka
■タイトル 

超装戦隊マーシャルフォース 〜堕天の契約〜 [No.11029]

■プロット

プロローグ:堕ちゆく都市

 ――この街は、静かに死にかけていた。

 ネオ・トウキョウ。
 無数の高層ビルが並び、無機質な照明が夜を追い払い、管理と秩序が人々を守る都市。
 そこには平和があった。
 だが同時に、心の鼓動を奪い取るほどの「沈黙」も存在していた。

 人々は同じように働き、同じように笑い、同じように眠る。
 そこに自由も熱もなく、ただ均質な生命の行進があるだけ。

 その沈黙に、たった一人の男が刃を突き立てた。
 クロウ。
 爆破と情報操作を駆使し、ただ「街を目覚めさせる」ためだけに混乱を撒き散らす思想〇。
 彼の存在は、やがて都市を揺るがす影となった。

 だが――。
 その影と最も深く交わり、そして堕ちていく者が現れる。

 正義の象徴、マーシャルフォースの戦士。
 その名は ユナ。
 マーシャルピンクとして市民に希望を与えた女戦士。

 クロウと対峙した彼女はクロウを殺めず〇〇する事を選ぶ。「街を目覚めさせる」目的を知るために…
その瞬間、運命の歯車は静かに動き出した。
 戦いではなく、契約。
 守護者と破壊者という二つの刃が重なり合い、やがて都市を焼き尽くす契約の炎となる。

 ――この物語は、正義が死に、愛と破壊が結ばれるまでの記録である。

第1章:邂逅の影

 マーシャルフォース隊本部の地下深くにある〇〇室。
 鋼鉄の壁と無機質な照明が、時間の感覚を奪い取る空間。
 ユナは無言のまま、ドアの前に立っていた。マーシャルピンクとして数々の敵と対峙してきたが、今日ばかりは胸の奥に小さな棘のような違和感が刺さっていた。

 クロウ。
 爆破と情報操作を繰り返し、都市を混乱させる思想〇。
 組織的なバックアップはなく、ただ一人で動いているにもかかわらず、その存在はマーシャルフォース隊の作戦会議に何度も上がるほど異質だった。

 ユナは深く息を吸い、ドアを開ける。
 そこにいたのは、〇〇椅子に縛られながらも余裕を失わぬ男だった。
 黒い髪は乱れ、唇の端には乾いた血が残っている。だが、瞳だけは異様なほどに輝いていた。

 「やっと来たか。マーシャルピンク」

 挑発的な響きを帯びた声。
 ユナは即座に表情を固め、冷たい視線を返す。

 「無駄口を叩くな。お前の目的を聞きに来ただけだ」

 クロウは笑った。〇〇された体を少し傾け、わざとらしくユナを見上げる。
 「目的? 正義の女神にそんなことを聞かれるとはな。俺はただ、この街の“静寂”を壊したいだけだ」

 「それで無関係の人間を巻き込むのか」
 ユナの声は鋭く、容赦がなかった。
 だが、クロウの瞳はその冷徹さを楽しむかのように輝きを増していく。

 「君にはわかるはずだ。街は秩序に縛られ、感情を失っている。人々は画一化され、管理され、死んだように生きている。俺はそれを拒絶するだけだ」

 ユナは机越しに身を乗り出した。
 「言い訳だ。ただの破壊衝動を、思想にすり替えているだけだ」

 クロウは声を潜め、囁くように言った。
 「……なら、君はどうだ? 君こそ、ただの兵器じゃないか」

 心臓が一瞬、跳ねた。
 ユナは反射的に拳を握り締めたが、すぐに冷静を取り戻す。
 「私は人々を守る。お前とは違う」

 「違う?」クロウは目を細め、ゆっくり首を振る。
 「いや……似ている。君は命令に従い、感情を捨てて戦ってきた。正義の仮面を被り、ただ無表情に敵を斬り捨ててきた。その瞳には……殺した者たちの影が映っている」

 ユナの呼吸がわずかに乱れた。
 ――なぜ、この男は私の奥を覗き込むような言葉を放てる?
 過去、数えきれないほどの敵を倒してきた。疑問を抱かぬよう、自分に言い聞かせてきた。
 それを、この男は一言で抉り出す。

 「やめろ」
 短く吐き出すような声。
 「お前の言葉に意味はない」

 クロウは笑う。だがそれは勝ち誇った笑いではなかった。
 「君は綺麗だよ。冷たい瞳で人を斬り捨てるのに……その奥に小さな炎を隠している。俺はそれを見たい。燃え尽きる瞬間を」

 ユナは一歩踏み出し、机に両手を叩きつけた。
 金属音が響く。
 クロウは怯えず、むしろ楽しむように目を細めた。

 「……いずれ、君は俺に惹かれる」
 「そんなことは絶対にない」
 「断言できるのか? 今の瞳は、ほんの少し揺れていたぞ」

 ユナは何も言えなかった。
 心臓の鼓動が、耳鳴りのようにうるさい。
 冷静を装っても、その揺らぎは確かに存在していた。

 「……これ以上は無駄だ」
 ユナは踵を返し、出口へ向かう。
 だが背中越しにクロウの声が追いかけてきた。

 「楽しみにしてる。マーシャルピンク。君が“正義”を裏切る日を」

 ドアが閉まる。
 隔絶された空間に静寂が戻ったはずなのに、ユナの胸の奥ではまだ、彼の声が響き続けていた。

第2章:影の契約

 ネオ・トウキョウの夜空を裂くように、マーシャルフォース隊本部の地下施設の警報が鳴り響いた。
 マーシャルフォース隊の防御網を破ることなど、本来ならば不可能だ。だが、警備班の報告では「内部からの干渉」の痕跡があるという。

 ユナ――マーシャルピンクは、私服のまま現場へ駆け込んだ。
 通路の一角で、火花と煙が視界を覆う。壁のパネルが吹き飛び、火災抑制装置が作動している。

 「退避を! 二次爆発の可能性がある!」
 部下たちの叫び声を背に、ユナは煙の中を突き進む。
 ――小規模な爆発。死者を出すにはあまりに控えめ。
 狙いは破壊ではない。混乱だ。

 彼女の直感は、ただひとつの名を思い出させる。
 ――クロウ。



 事態はすぐに収束した。だが問題は残った。
 爆破装置の回路からは、〇〇中のクロウしか知り得ないコードが発見されたのだ。

 「内部に協力者が……?」
 上層部がざわめく中、ユナはただ無言で席を立った。
 彼に会わなければならない。



 〇〇室。
 分厚い扉が閉じると、そこには変わらず椅子に腰かけるクロウの姿があった。
 まるで、この混乱さえ「計画の一部」であるかのように。

 「よう、マーシャルピンク。騒がしかったな」
 彼は余裕の笑みを浮かべる。

 ユナは机を隔てて立ち、鋭い声を放った。
 「お前が仕掛けたのね」

 「証拠があるのか?」
 「……装置のコードに、お前の署名があった」

 その一言に、クロウは声を立てて笑った。
 「やっぱり消しても気づくんだな。君は優秀だ」

 ユナの拳が机を叩く。
 「ふざけるな。あれで人が死んでいたらどうするつもりだった」

 「死んでないだろ? 俺は君をよく理解してる。君は必ず〇〇を最小限に抑える。だからあれは“試し”だ。君がどこまで俺に縛られてるのか、な」

 「……!」

 ユナの心臓が、一瞬だけ脈を早める。
 彼の言葉が真実ではないと、どうして言い切れる?
 確かに彼女は爆発の現場で真っ先に「クロウの影」を思い出したのだ。



 「君は俺を撃てなかった」
 クロウの低い声が、室内に落ちる。
 「正義の名のもとなら、人を殺すことにためらわなかったはずだ。だが俺には引き金を引けなかった」

 ユナは唇を噛む。
 ――それを突かれるのは、想定していた。だが心が拒絶できない。

 「私は……任務に従っただけ」
 「違う。君は俺を“欲してる”。だから撃てなかった」

 クロウの目が射抜くようにユナを見つめる。
 彼の声は挑発ではなく、確信だった。

 「俺とお前は同じだ、マーシャルピンク。正義だの秩序だのという仮面を被りながら、内側ではもっと原始的なものを求めている」
 「黙れ……!」
 「認めろよ。君は俺と戦っているとき、生きてると感じただろう?」

 その瞬間、ユナの脳裏に蘇る。
 火花、爆風、緊張。
 そして、彼と対峙したときだけ胸を突き破るように走る熱。

 「違う……私は……」
 言葉が震える。否定が弱い。



 クロウは静かに身を乗り出し、囁くように告げた。
 「これは契約だ、ユナ。俺を殺さなかった時点で、君はもう俺の側に足を踏み入れた。認めようが認めまいが、な」

 「……契約?」
 「そうだ。君は俺を必要とする。俺も君を必要とする。なら、いずれ答えは一つしかない」

 ユナは息を呑んだ。
 ――契約。
 その言葉が、なぜか甘美に響いた。

 彼女は背を向けると、扉へ歩き出す。
 振り返ることなくただ一言。
 「次は……必ず処分する」

 だが、その声の奥底に宿る揺らぎを、クロウは逃さなかった。

 「いいや。次はもっと深く、俺を求めることになる」

 扉が閉ざされてもなお、その声はユナの耳から離れなかった。



その夜、ユナは眠れなかった。
ベッドの上で、握りしめた拳が震える。
――契約。
その言葉が、脈打つように心臓を叩いていた。

第3章:揺らぐ刃

 夜明け前のネオ・トウキョウ。
 人工的な朝焼けがビル群を染め、都市はいつも通りに目を覚まそうとしていた。
 だがユナの胸の奥では、眠れぬ夜の余韻がなお渦巻いていた。

 ――契約。
 クロウの声が、耳の奥に焼きついて離れない。

 彼の言葉はただの挑発であるはずだった。だが心臓の鼓動が否応なく反応したのは、なぜなのか。
 自分が彼を「殺せなかった」のは、任務上の判断だった。そう言い聞かせている。
 ……本当に?

 ユナは洗面台の鏡を睨む。
 映るのは、無機質な戦士の顔。だがその瞳の奥には、見てはいけない火種が灯っている気がした。



 午前の作戦会議。
 上層部からは厳しい指示が飛んだ。

 「内部協力者を探し出せ。クロウの影響は思った以上に深刻だ」
 「〇〇中の彼を尋問するな。心理的な接触を避けろ」

 その一言に、ユナの胸が小さく反応する。
 ――彼に会うな。
 だが、それはつまり「会えば揺らぐ」と認めていることではないのか。

 司令官の声が遠くなる。
 ユナは無意識に拳を握りしめていた。



 その夜。
 ユナは一人、射撃訓練場に立っていた。
 無数の標的を撃ち、粉砕する。
 だが、標的を見つめては浮かんでくるのは――クロウの瞳。

 「……クソッ!」
 叫びとともに、銃を床に叩きつける。
 冷たい鋼の音が響く。

 「俺とお前は同じだ」
 「君は俺を欲してる」

 あの声が、訓練場の空気を震わせるように蘇る。

 ユナは息を荒げ、額の汗を拭った。
 否定したい。だが、心の奥底で別の声が囁いていた。
 ――もし彼が自由の身だったら。もし、次に対峙したら。
 そのとき、自分は本当に「処分」できるのか?



 翌日。
 ネオ・トウキョウの街の一角で、不可解な事件が発生した。
 監視網をすり抜け、警報をかいくぐり、ただひとつのメッセージだけが残された。

 壁に赤い塗料で描かれた一文。

 「契約は進行中だ」

 市民たちはただの落書きとして恐怖を煽られた。
 だがユナには、誰の仕業か分かっていた。

 ――〇〇されているはずのクロウ。
 それなのに、この街のどこかで彼の「影」が動いている。



 その夜。
 ユナは禁じられていると知りながら、〇〇室の前に立っていた。
 指紋認証を解除する手は、わずかに震えている。

 ドアが開く。
 そこには、椅子に座りながらもまるで待ち構えていたかのようなクロウの姿。

 「来ると思っていた」
 彼の低い声が、闇に溶ける。

 ユナは一歩踏み出す。
 「……外に協力者がいるのね。あのメッセージ、あなたの仕業でしょう」

 クロウは口角を上げた。
 「協力者? 違うな。俺の“契約者”だ」

 「契約者……?」
 ユナの眉が動く。

 「君と同じだよ、ユナ。俺の声に触れ、揺らぎを覚えた者たちがいる。彼らはもう、俺の側に立っている」

 冷たい戦慄が背筋を走る。
 ――私だけじゃない?
 彼の言葉に心を揺らされたのは、自分だけではない?

 「君は選べる。正義にしがみつくか、揺らぎを受け入れるか」
 クロウの瞳が、まるで契約の証明のように燃えていた。

 「俺と君が一つになれば、この街は――もっと美しく壊れる」

 ユナは息を呑む。
 否定の言葉が喉に上がるのに、声にならなかった。



 その瞬間、〇〇室の警報が鳴り響いた。
 照明が赤に染まり、非常ロックが作動する。

 クロウはわずかに笑みを深めた。
 「ほら、始まった」

 ユナの心臓は、抑えきれないほど激しく跳ねていた。

第4章:契約の芽吹き

 警報が鳴り響く〇〇室。
 赤色灯が点滅し、重厚な扉が自動的にロックされる。

 ユナは身構えた。
 「……何を仕掛けたの」

 クロウは余裕の笑みを浮かべたまま、わずかに顎を上げる。
 「俺が仕掛けたんじゃない。俺の“契約者”たちが動き出したんだ」

 「契約者……?」
 「そうだ。君が感じている揺らぎと同じものに触れた者たちさ。正義や秩序の仮面を外し、俺と同じ衝動を選んだ者たち。彼らは俺の声を信じ、俺のために動く」

 ユナの背筋に冷たいものが走る。
 ――揺らいでいるのは、私だけじゃない。
 クロウの思想に心を染められた者たちが、すでに街の中で芽吹いている。

 そのとき、通信機がけたたましく鳴った。
 「こちら警備班! 外部からの侵入を確認! 複数の武装集団が――」
 そこで通信は途切れた。

 クロウが笑う。
 「始まった。彼らは俺を奪い返すために来たんだ」

 ユナはクロウに詰め寄る。
 「ふざけるな! あんたはここで終わる!」

 だが、言葉とは裏腹に心臓が乱打していた。
 ――彼が奪還されれば、この街はさらに混乱に陥る。
 それを止めるためには、彼を“処分”するしかない。
 なのに、自分は引き金を引けるのか?



 やがて爆発音が近づき、〇〇室の外壁が震えた。
 天井のパネルが落下し、煙が流れ込む。
 クロウは椅子に縛られたまま、それを楽しむかのように目を細めた。

 「選べ、ユナ」
 「……何を」
 「俺をここで処分するか。それとも――俺と共に外へ出るか」

 ユナは息を呑んだ。
 その選択は、彼女がずっと避けてきた岐路だった。

 外の混乱は激しさを増している。
 隊員たちの悲鳴、銃声、爆発音。
 正義が崩れ落ちる音が、耳の奥に響く。

 「俺を殺せば、君はまた兵器に戻る。だが……俺と行けば、君は初めて“生きる”」

 クロウの囁きは甘美で、そして残酷だった。

 ユナの瞳が揺れる。
 手が震える。
 銃口が、彼に向けられる――



 その瞬間。
 外壁が破壊され、黒装束の集団が突入してきた。
 クロウの契約者たち。
 彼らの瞳は一様に狂気を帯び、まるでクロウの意志そのものが宿っているかのようだった。

 「クロウ様を解放しろ!」
 彼らの叫びが、〇〇室を震わせる。

 ユナは咄嗟に銃を構えた。
 だが、クロウは落ち着き払って言った。
 「撃てるのか? 君はもう、俺を撃てなかったように……彼らを撃てるのか?」

 ユナの心臓が跳ねる。
 彼を中心に広がる「揺らぎ」は、もう止められない。
 自分自身すら、その渦に飲み込まれかけている。



 炎と煙の中、クロウの声だけが鮮明に響いた。

 「ユナ――契約は完成する。
  あとは君が最後の一歩を踏み出すだけだ」

 彼の瞳が、真っ直ぐにユナを射抜く。

 ユナは歯を食いしばり、引き金に指をかける。
 ――私は、どうする?

 銃声が鳴るか、彼の〇〇が解かれるか。
 その瞬間が、ラストへと繋がる分岐だった。

最終章:契約の果て

 銃口が揺れる。
 ユナの指は引き金にかかっていた。
 だが、弾丸が解き放たれる前に、外壁を破った契約者たちが一斉に襲いかかってきた。

 「クロウ様を解放しろ!」
 狂気の叫びが〇〇室を満たす。

 ユナは反射的にマーシャルピンクに変身し応戦した。
 銃声、火花、血飛沫。
 次々と倒れていく契約者たち。
 だが、彼らの目に恐怖はなかった。むしろ快楽に震えながら、命を散らしていった。

 その異様な光景に、ユナの心はひび割れる。
 ――なぜ、彼らは死を恐れない?
 答えは明白だった。
 彼らはクロウに“触れてしまった”からだ。



 最後の契約者が倒れ、煙の中に静寂が戻る。
 ユナの体は震え、銃は手から滑り落ちた。

 その瞬間、背後から囁き声が届く。
 「……やっぱり撃てなかったな」

 いつの間にか〇〇を外したクロウが、背後に立っていた。
 赤い警報灯に照らされた彼の瞳は、炎のように揺らめいている。

 「君は兵器じゃない。君は……俺の女だ」

 その言葉が耳を貫いた瞬間、ユナの中で何かが決壊し
 マーシャルピンクのマスクを外した。



 クロウはゆっくりとユナの手を取り、耳元に熱を吹きかける。
 「正義は君を縛りつけていただけだ。俺といれば、もっと自由に燃えられる」

 「……違う……私は……」
 否定の声は弱々しく震え、次の言葉に呑み込まれる。

 「認めろ。お前は俺を欲している」

 その瞬間、クロウの唇がユナの唇を奪う。
 電流のような感覚が走り、膝が崩れそうになる。

 「やめ……っ……」
 震える声とは裏腹に、体は拒絶できなかった。
 心の奥底で、ずっと求めていた熱が、彼に触れられたことで一気に噴き上がる。



 〇〇室の壁に押し付けられ、ユナは息を荒げた。
 クロウの手がユナのマーシャルスーツを乱暴に引き裂き、冷たい空気が肌を撫でる。
 それでも彼女は反抗しなかった。
 ――いや、もうできなかった。

 「綺麗だ……」
 クロウの囁きが甘く絡みつく。
 「冷たい仮面を脱いだ君は、こんなにも熱い」

 ユナの心は抗うことを諦め、彼の熱に飲み込まれていった。
 理性が溶け、正義の名は砕け散る。
 残ったのは、ただクロウへの渇望だけ。



 激しい衝動の果て、二人は絡み合い、互いの存在を刻み込む。
 ユナの瞳は涙と熱で濡れ、クロウの影をその奥に映していた。

 「ユナ……これで契約は完成した」
 クロウが耳元で囁く。
 「お前は俺のものだ。そして俺も、お前のものだ」

 ユナは息を荒げながら、かすれた声で答えた。
 「……ええ……あなたと……一緒に……」

 その言葉は、自らの堕落を認める誓いだった。



 翌朝。
 ネオ・トウキョウは炎に包まれていた。
 クロウの契約者たちが各地で暴動を起こし、街は崩壊の道を歩み始めていた。

 その中心に立つのは、クロウとユナ。
 かつて「正義の象徴」と呼ばれたマーシャルピンクは、今や黒い衣に身を包み、クロウの隣で不敵に微笑んでいた。

 「ユナ……どう感じる?」
 「……生きてるって、初めて思えた」

 クロウは満足げに笑い、彼女の手を握る。
 二人の視線の先で、都市が燃え落ちていく。

 ――正義は死んだ。
 残ったのは、破壊と快楽に支配された契約の絆だけ。



――完

エピローグ:堕天の華

 ――数週間後。

 かつてのネオ・トウキョウはもう存在しなかった。
 高層ビル群は黒煙に包まれ、街路は炎の痕跡で焼け焦げている。
 瓦礫の間を逃げ惑う市民の数も、日に日に減っていた。

 マーシャルフォース隊本部。
 生き残った隊員たちは地下深くに潜み、散発的な抵抗を続けていた。
 だが、その誰もが口にできない名前があった。

 ――ユナ。
 かつて仲間であり、象徴だった存在。



 ある日、残党の前に現れたのは、黒い装束に身を包んだ女戦士だった。
 街頭モニターに映し出されたその姿に、人々は凍りつく。

 長い髪をなびかせ、艶やかな唇で笑う。
 その隣に立つのはクロウ。
 二人の指は固く絡み合い、まるで契約の証のように離れなかった。

 「市民よ、これが真実だ」
 クロウの声が街に響く。
 「秩序に縛られ、死んだように生きる時代は終わった。これからは欲望と本能のままに燃え尽きろ」

 その横で、ユナ――かつてのマーシャルピンクは、静かに口を開いた。

 「……私は守護者ではない。
  正義など、幻だった。
  私はクロウと共に、新しい世界を創る」

 その声は澄んでいて、美しくさえあった。
 しかし、それはもう仲間たちが知るユナの声ではなかった。



 モニターを見つめる元司令官は、震える拳を握りしめる。
 「ユナ……なぜだ……なぜお前が……」

 その問いに答える者はいなかった。
 ただ残された者たちは知っていた。

 ――ユナはクロウに堕ちたのではない。
 ――ユナは、自ら望んで“彼の側”を選んだのだ。



 やがて画面の中で、クロウがユナと口づけを交わす。
 ユナは微笑み、熱に濡れた瞳で彼を見上げる。
 その艶やかな仕草に、街の人々は戦慄し、同時に目を逸らせなくなった。

 崩壊する都市を背に、二人は確かに「美しい」とさえ映った。



 炎に沈みゆくネオ・トウキョウ。
 その中心で、クロウとユナは互いを抱きしめ合い、
 まるで新たな神話のように人々の記憶へと刻まれていった。



――終幕

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