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Naka

■タイトル　

《堕天のワンダーレディー》　[No.11027]

■プロット
第一章　白銀の女神
爆炎が夜の街を照らしていた。
連鎖する爆破テロが首都を恐怖に包むそのとき、瓦礫の中から白銀の人影が舞い降りる。
 
ワンダーレディー。
 
白銀と紅の戦闘スーツに包まれた彼女は、風のように駆け、炎の中から〇〇を抱き上げた。
群衆の目が歓喜に染まる。
 
「ワンダーレディーだ！　女神が来た！」
 
人々の歓声に包まれ、彼女は微笑を浮かべた。
だが、その瞳の奥に影が走る。
瓦礫の下に埋もれ、間に合わなかった命の断末魔が脳裏から離れない。
 
“助けた者”よりも、“救えなかった者”の声が、いつも胸を締め付けるのだ。
 
 
第二章　蛇の囁き
黒いシルエットが崩れたビルの屋上に立っていた。
黒衣の男、ヴァイパー。
国際テロ組織「ヴァイパー・セル」を率いる冷酷な首領。
 
「正義の象徴。だが、その微笑みの裏には虚しさがある。」
スピーカー越しの声が瓦礫の街に響く。
 
彼女は叫んだ。
「黙れ！　私は市民を守る！」
 
だがその瞳は、彼女の奥底を見抜くように冷たく光る。
「お前を理解できるのは俺だけだ。」
 
拳と刀を交える刹那、囁きが耳を掠める。
毒のように甘く、心を侵す。
 
 
第三章　揺らぐ心
爆破事件は防がれた。
市民は熱狂し、政府は「ワンダーレディーの偉業」をメディアで讃える。
 
だが、表彰台で光を浴びながら、彼女は息苦しさを覚えていた。
――これは自分のための戦いではない。
国家が作り上げた偶像としての「ワンダーレディー」に過ぎない。
 
夜。高層ビルの屋上で月を見上げていたとき、背後に声がした。
「また孤独を噛みしめているのか？」
 
ヴァイパーがそこにいた。
剣も銃も持たず、ただ隣に立つ。
 
「敵であるはずの私に、なぜ近づく？」
「お前はもう気づいている。正義は空虚だと。」
 
風に揺れる髪が、彼の指先にかすかに触れた。
胸の鼓動は戦場よりも速く、高鳴っていた。
 
 
第四章　最終決戦
首都を破壊するEMP弾頭が、地下都市で起動しようとしていた。
政府の要請で突入するワンダーレディー。
そこで待っていたのはヴァイパーだった。
 
激突する二人。
炎と閃光の中、死闘は続いた。
だが力の限界を超えたとき、彼女のスーツは次々と破壊され、ついに剣は折れた。
 
崩れ落ちるワンダーレディー。
ヴァイパーは彼女を抱き止め、囁く。
「抗うな。お前はすでに俺のものだ。」
 
頬に触れる手。
熱を与える吐息。
抵抗の声は喉で途切れ、震える吐息だけが漏れた。
 
敗北の〇〇が、なぜか甘美な安堵へと変わっていく。
“女神”は瓦解し、ひとりの“女”が解き放たれていった。
 
 
第五章　闇の玉座
翌朝、メディアは一斉に報じた。
「ワンダーレディー、勝利！　首都を救う！」
人々は歓喜し、街は祝福に包まれた。
 
だが真実を知る者は、二人だけ。
 
地下都市の奥、黒き玉座。
その隣に立つワンダーレディーの姿があった。
白銀のスーツは黒紅に変わり、肌には闇の紋様が刻まれている。
 
かつての正義の女神は死に、闇の女王が生まれたのだ。
 
ワンダーレディーは微笑んだ。
それは市民のためではない。
ただひとり、ヴァイパーのために。
 
 
エピローグ
「正義とは、誰のためにある？」
かつての問いが、今も胸に響く。
 
答えは、もう決まっている。
――彼のために。
 
ワンダーレディーは闇の女王として、新たな運命を歩み始めた。

2025-08-20 23:39:30