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ごー
ごー
タイムアスモデウス
Katherine
まりもっこす
おおたこ
■タイトル 

鮮光戦隊サイリュウジャー サイリュウピンク サイリュウピンク変身異常!! [No.11395]

■プロット
【概要】
☆GIGAさんのセーラー戦士系スーツの質感が好みなので、そういう質感になるといいなと思います。
☆演者の息づかいが伝わるカメラワーク/照明だと、さらに良いと思います

【変身前の衣装・サイリュウスーツに関して】
変身前の衣装・サイリュウスーツはSPSC-50の物と同様でいいと思います
白衣もあるといいと思います。
(スーツがサテン地だと更に良いと思います)。
※付け乳首はNGです

【本編】
夜の病院は、静けさが“仕事”をしている。
消毒液の匂い、遠くのモニター音、空調の乾いた風。
高治佳代はその全部を、呼吸のリズムに織り込んで歩く。

「次、処置室。血ガスの結果も確認して——」

声は落ち着いていた。落ち着いていなければ、患者の不安に飲まれる。
それが医師の訓練で、彼女の矜持だった。

けれど、廊下の照明が一瞬だけチカッと揺れ、空気の温度が落ちた。
“異物”が入ってきた合図だ。
肌が、理由もなくざわつく。背中の産毛が逆立つ。

「……来た」

佳代の左手首。タイヤ型のチェンジャーが、白衣の袖口から覗いた。
そこに触れた指先は、冷たい金属に安堵する。
この輪が回れば、彼女は“守る側”の強さを手に入れられる。

次の瞬間。

「グチャァ……♡」

湿った音が、すぐ背後で鳴った。
振り向くより早く、何かが手首に跳ね、まとわりつく。

ぬるい。 粘る。
指を離そうとしても、皮膚と機械の境目を狙って、入り込んでくる。

グチャット——ヘドロじみた戦闘員が、にやにやと笑っていた。
病院の白が、その存在だけで汚れていく気がする。

「先生ぇ。変身、するんでしょ? でもね——汚れたら、動かないよぉ」

佳代は息を吸い、吐くより先に、チェンジャーを起動しようとした。
いつもの手順。いつもの冷静さ。
“変身アプリ”をタップして、マスクアイコンを押して、カウントダウン——

(——反応が、ない)

タップ音が鳴らない。
画面が指先を認識しない。
粘液の薄膜がガラス面に張り付き、皮膚の温度と意志を遮断する。

「っ……!」

もう一度。強く。
けれど、誤作動みたいに画面が勝手に明滅し、見慣れない警告が走る。

《ERROR:キョウメン汚染検知》
《アプリ起動制限》
《セーフティロック作動》

「そんな……!」

グチャットが嬉しそうに肩を揺らす。
「ほらぁ。先生って、きれい好きだもんねぇ。汚れるの、苦手でしょ?」

違う。
汚れが苦手なんじゃない。
これは“命の匂い”じゃないから、受け付けない。

患者の血は、救うために触れられる。
汗も涙も、守るために拭える。
でも、この粘つきは——“曇らせるためだけ”に触れてくる。

廊下の奥で、悲鳴。
次いで、金属が引きずられる音。
暗い気配が膨らみ、病院の空気を塗り替えていく。

佳代は白衣の襟元を押さえた。
胸の奥で、キラメンタルが熱を持つのを感じる。
だけど、その熱が焦りに転ぶと、一気に曇る。
(落ち着け。私は医師。私は——サイリュウピンクに選ばれた戦士)

「サイリュウジャー……シャイニング!」

声を出す。
声で、自分の心を立て直す。

だがグチャットの粘液が、タイヤの溝を“噛んだ”。
回そうとした指が、ぐにりと引き戻される。
手首が、機械ごと縛られたみたいに重い。

そして——天井が裂けた。
黒い湿り気が滴り落ち、白い床に“ヨゴースの影”が染みる。
佳代の視界に、見慣れない怪人の輪郭が映り込んだ。

医療器具の形をしている。
なのに、どれも“救う道具”じゃない。
奪うための、歪んだ器具だ。

---

怪人は、病院の備品置き場から現れた。
点滴スタンドが脚。
酸素チューブが触手。
血圧計のカフが、腕のように膨らんで脈打っている。
聴診器の先端が、獲物を探す舌みたいに揺れた。

そして胸部に、異様なコア。
心電図モニターの画面が、黒い波形を描いている。
——生命の波形ではない。
“奪った輝き”を数えるメーターだ。

「メディカルキョウメン……!」

佳代は直感で名付けた。
“治す”を模した“汚染”の怪人。

「先生、先生ぇ」
グチャットが背後から絡む。
「変身できないまま、患者助けるの? それとも、先生の手で——壊しちゃう?」

挑発。 焦りを引き出す言葉。
それが、いちばんサイメンタルを曇らせる。

佳代はポケットからアルコール綿を掴んだ。
彼女にとって、それは武器じゃない。 “基本”だ。
治療の第一歩。感染管理の第一歩。
そしていまは、汚染を剥がす第一歩。

「消毒は、私の仕事よ」

アルコールの匂いが立つ。 グチャットの粘液が、嫌そうに波打った。

「やだぁ、それ!」

(効く——!)

佳代はタイヤの溝に綿を押し込み、擦る。
粘液が薄まり、画面の誤作動が一瞬落ち着く。
しかし次の瞬間、アプリが勝手に立ち上がっては落ち、立ち上がっては落ちる。

《サイリュウジャー……シャイニング》

《……》
《ERROR:汚染再付着》
《緊急停止》

まるで“変身”という扉の前で、何度も鍵を差し替えられているみたいだ。
そのたびに、期待だけが身体を先走り、置き去りになる。

——怖い。 悔しい。でも、それ以上に。

(早く……“あの感覚”になりたい)

スーツが装着される瞬間の圧。
皮膚の上に“守り”が重なる確かな重み。
背筋が伸び、世界の輪郭がクリアになる、あの冷たい熱。
それを知ってしまった心は、求めてしまう。

メディカルキョウメンが動いた。
点滴スタンドの脚で踏み鳴らし、酸素チューブが蛇のように伸びる。
チューブの先端が開き、吸引音が鳴った。

「シュゥゥゥゥ……」

吸われる。
空気ではなく——心の光が、胸の奥から引っ張られるような感覚。
佳代は思わず胸元を押さえた。

「っ……やめ……!」

聴診器の先端が、胸の前で揺れる。
それは触れていないのに、触れられているみたいに感覚が過敏になる。
“診られる”恐怖。
“測られる”羞恥。
命のための診察が、いまは奪うための儀式みたいに歪む。

グチャットが笑った。
「先生、顔赤いよぉ? ほらほら、落ち着いてぇ。曇っちゃうよぉ♡」

佳代は歯を食いしばる。
曇るな。 曇れば、変身は遠のく。
変身できない自分のまま、患者も、自分も守れない。

「……もう一回」

彼女はアルコール綿を捨て、今度は生食のボトルを掴んだ。
機械の溝に流し込み、粘液を“洗い流す”。
治療の手つきで、徹底的に。

《……起動可能》

画面が、ようやく安定した。

佳代は指を置き、深く息を吸って——押した。

---

「サイリュウジャー……シャイニング!」

カウントダウン。
タイヤが回る。
光が走る。

——来る。

スパークが、白衣の袖口から腕にまとわりついた。
触れていないのに、触れられている。
冷たくないのに、ぞくりとする。
皮膚の上を滑る光が、骨の形をなぞり、筋肉の線を“知っている”みたいに沿っていく。

右腕から白いグローブが生まれた。
指先の感覚が、急に研ぎ澄まされる。
空気の圧、距離、温度、金属の反射——全部が“戦うため”に整列する。

次に肩。
胸元へ——来るはずだった。

だが、そこで光が止まった。

「え……?」

スーツの装着圧が、片側だけ完成している。
右腕と肩は戦士。
左側は白衣のまま。
胸の中心で、二つの世界が裂け目を作っている。

タイヤが——回り切っていない。
グチャットの粘液が、最後の一瞬で溝に戻り、回転の“終点”を噛んだのだ。

《中断》
《半装着状態》
《安全のため固定》

固定。

佳代の背中に、冷たい汗が走った。
半分変身のまま、解除も再起動もできない。
“途中の身体”が、戦場に縫い付けられた。

グチャットが嬉しそうに拍手をした。
「わぁ、すごぉい! 先生、【半分だけ戦隊ヒロイン】だぁ♡」

半分だけ。その言葉が、胸を刺す。
戦う覚悟はあるのに、形になれない。
守りたいのに、守りの装甲が足りない。

メディカルキョウメンが、ここぞとばかりに攻めてきた。
酸素チューブが絡み、点滴のフックが服を引っかける。
白衣の裾が引かれ、身体のバランスが崩れる。

スーツ側は動ける。でも布側が、引きずられる。

そのズレが——妙に、〇〇的だった。
“守る鎧”があるのに、“守られていない部分”が晒される。
冷たい廊下の空気が、布越しに肌へ刺さり、そこだけが弱点として目立つ。

佳代は踏み込み、片腕でチューブを払い、怪人のコアへ向けて拳を振るう。
だが聴診器が伸び、バイザーの代わりに——彼女の“心音”へ近づいた。

「……ドクン、ドクン、ドクン」

耳元で聞こえる。
自分の鼓動が、外から覗かれているみたいに。

(やめて……見ないで)

そう思った瞬間、曇りが差した。
恥ずかしさと焦り。
それをグチャットは待っている。

「そうそう、その気持ち! 曇ってきたぁ♡」

怪人の吸引が強くなる。
胸の奥が引っ張られる。
光が抜け、身体が重くなる。

佳代は自分に言い聞かせる。
診察室で震える手を落ち着かせる時と同じように。

(私は医師。私は、誰かの命を守る手を持ってる)
(この手は、汚れを落とせる)
(曇りは、洗って戻せる)

彼女は床を滑るように動き、洗浄用ホースのバルブへ手を伸ばした。
半変身のままでも、やれることはある。

「汚染は……流す!」

水が噴き上がり、グチャットとチューブを叩く。
粘液が薄まり、タイヤの溝の抵抗がわずかに軽くなる。

佳代は左手首を押さえ、痛いほどの力でタイヤを回した。
——最後の“引っかかり”を、ねじ切るように。光が、ようやく全身を取りに来た。
白衣がスパークに溶け、ピンクの装甲が完成する。
バイザーの内側が静まり、世界が整う。

だが、その瞬間—メディカルキョウメンのコアが赤く点滅した。

《LOCK》
《LOCK》
《LOCK》

何かが、次の段階へ進んでいる。

---

サイリュウピンクとしての佳代は、立ち直るのが早い。
本来のフォームになった途端、身体の芯が通る。
視界は鮮明。足運びは軽い。
“守るための動き”が、迷いなく出せる。

「ここは治す場所。壊す場所じゃない!」

彼女は回り込み、チューブを掴み、逆に利用して怪人を引き寄せた。
一瞬の間合い。
拳がコアへ迫る。

だが——その直前。

聴診器の先が、バイザーの縁を“カチリ”と叩いた。
微かな音。
それだけなのに、バイザーのHUDに見慣れない表示が走る。

《解除機構:キョウメン固定》
《サイホイール:封鎖》
《サイメンタル:吸引中》

「……解除、封鎖?」

嫌な予感が背骨を滑った。
解除できない=戻れない。
戻れない=戦士のまま、医師の場所へ戻れない。

しかも、その“固定”は守りではない。
吸引のための固定——獲物を逃がさないための檻。

医療器具ジャメンが、笑うように胸のメーターを鳴らす。
心電図の波形が黒く増幅し、吸引音が一段深くなる。

「シュゥゥゥ……」

今度は、もっと直接的だった。
胸の奥から光を引き抜かれる感覚が、身体の端まで伝わる。
息が、浅くなる。
でも苦しいのとは違う。
“空っぽにされる”怖さだ。

グチャットが横で踊った。
「先生、勝っても戻れないんだよぉ♡ ずーっとサイリュウピンクのまま。ずーっと吸われるまま!」

佳代は怒りで拳を握った。
怒りは曇りにもなる。
けれど彼女は、怒りを“決意”に変えようとする。

(負けない。私は——輝く)

彼女は必殺の構えに入った。
スパークを集め、光を刃に変えるイメージ。
サイメンタルを燃やし——押し返す。

「サイリュウ……フィニッシュ!!」

光が走る。
廊下を染めるピンクの閃光。
怪人の身体がひび割れ、点滴スタンドが軋み、チューブが弾けた。

——勝った。

勝った、はずだった。

だがコアが砕ける直前、医療器具ジャメンは最後の力で“注射器”を突き出した。
シリンジの中身は透明ではない。
黒い湿り気。ヨドンの汚染液。

「——ッ!!」

佳代の身体へ刺さったわけじゃない。
刺さったのは、チェンジャーの“隙間”だ。
解除機構の奥。サイホイールの回転軸。
そこへ、汚染液が注ぎ込まれた。

《解除不能》
《封鎖:確定》
《同期:低下》
《輝き:抽出開始》

その瞬間、スーツの装着圧が変わった。
守りの圧ではない。
締め付ける圧。
逃がさないための密着。

ピンクのサイリュウスーツが、まるで“身体を覚えた”みたいに、呼吸の起伏まで支配しようとする。
佳代は一歩下がり、壁に手をついた。

「……っ、そんな……私は……」

勝ったのに。
怪人は砕けたのに。
吸引は止まらない。

むしろ、吸引は“チェンジャー内部”から続いている。
解除封鎖のせいで、流れを断ち切れない。
自分の輝きを、自分で止められない。

グチャットが近づいた。
床の影のように、ぬるりと。
そして、粘液の腕がサイリュウピンクの背中を抱き寄せる。

「ねぇ先生。いい子にしよ? もう、がんばらなくていいよぉ」

佳代は抵抗しようとした。
足に力を入れ、拳を上げる。
でも——身体が言うことをきかない。

輝きが抜けていくと、筋肉の芯がほどける。
視界の彩度が落ちる。
バイザーの内側で、世界が少しずつ暗くなる。

(まずい……!)

患者を守るための光が。
自分を支えるための光が。
静かに、確実に、引き抜かれていく。

グチャットは、まるで“診察”の真似をするみたいに、聴診器の先端(汚れた模造)を佳代の胸の前で揺らした。
触れていないのに、触れられているように感覚が反応する。
——悔しい。怖い。
でも、それ以上に、身体が弱くなっていくのがわかってしまう。

「先生の輝き、きれいだねぇ。ほら、もっと……もっと曇らせよ?」

佳代は唇を噛んだ。
叫びたかった。
でも声が、喉でほどけて、細く震えた息に変わる。

遠くでスタッフの足音がする。
助けを呼ぶ声がする。
病院は、まだ“命の場所”として動いている。

なのに、佳代は——戻れない。
解除できない。
正体を隠すどころか、戦士の姿のまま、ここで——奪われていく。

グチャットが合図を送る。
廊下の影が、黒い裂け目になる。
ヨゴースの門。
その向こうは、湿り気と暗さで満ちている。

「おつかれさま、サイリュウピンク。これからは——治すんじゃなくて、曇らせる側だよぉ♡」
「……違う……私は……」

言いかけた言葉は、最後まで形にならなかった。
サイメンタルの核が、胸の奥で“薄く”なる。
光が、手のひらから零れ落ちるみたいに消えていく。

サイリュウピンクの面下で佳代の膝と心が折れた。

グチャットは、嬉しそうに彼女を抱え上げた。
“お姫さまだっこ”の形だけが、皮肉に優しい。
でもそれは救助じゃない。回収だ。

サイリュウピンクの装甲は、解除封鎖されたまま。
彼女の身体に密着し、呼吸を数え、心の光を吸い続ける檻。

バイザーの内側で、最後に見えたのは——
病院の白い天井ではなく、黒い門の縁に滲む“湿った闇”だった。

(……ごめんなさい)

患者へ。仲間へ。 そして、医師としての自分へ。
門が閉じる。 病院の音が遠のく。 世界が暗くなる。

——その暗闇の中で、チェンジャーだけが淡々と表示を繰り返していた。
《解除不能》 《輝き抽出:継続》 《状態:管理下》

【サイリュウピンク BAD END】



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